歌を大声で
大声で歌を歌うとき。車の中や、カラオケボックスで。昔を思い
出す。歌が下手で下手で、音楽の授業についていけなかった、あの
頃を。
こうして音楽で生活していくなんて、夢にも思わなかった、あの
頃。純粋にテレビの中で歌をうたっているアイドル達に羨望の眼差
しを向けたものだった。そして、修行の日々がはじまる。
修行と言っても、滝に打たれたりするわけじゃない。ただの歌の
練習だ。下手で恥ずかしいので、布団をかぶって、ベッドの上でウ
ーウー唸る。母親がこっそり覗いたら、さぞ心配する光景だっただ
ろう。
そして月日が流れて、バンドのボーカルとしてステージに立つこ
とになる。初めて歌った歌は、アンジーの「おやすみ」
「明日は何して遊ぼう。明日はどこで遊ぼう。
君の事、忘れない。おやすみ。」