仕事の延長としての個人 -Twitterで宣伝、営業をする人々

Twitterのタイムラインを眺めていると、普通に仲良くなったり知り合いになってフォローをしている人でも意外に仕事の話をするし、「自分の仕事の宣伝」をする人も多い。(そういう自分も宣伝になっている場合もあるかもしれない)

ましてや一方的に宣伝フォローしてくる人、@でメッセージを飛ばしまくる人、Twitterスパムみたいな人も結構いる。Twitterが今後も拡大を続けるのか、一過性のブームで終わるのか何とも言えないけど、まだまだこなれてないメディアなだけに感じることが多い。ここ最近で感じた職業と個人に関しての線引きについて備忘録的に書いてみる。

Twitterで多いタイプの企業配信

一つ目は企業や事業所のHPの更新情報を黙々と配信しているタイプだ。別にTwitter内での企業の宣伝活動は禁じられてないので問題もない。

ただ「それってRSSと何が違うの?」というケースが多い。というより簡易的にRSSの情報をTwitter向けに出力している自動出力の場合が多そうだ。

実際いくつかの企業サイトを見て回ると更新情報や新着情報が、まったくそのままTwitterに投稿されていたりする。WordPressや他のCMSなんかでも更新内容を直接Twitterに出力できるプラグインやアドオンがあったりするので比較的実装しやすいのだろう。

しかし「必要な人」はRSSリーダーで見ているだろうし、一般の人はサイト更新の情報だけ流されても困る。実際いくつかの企業アカウントは「え?こんな大企業なのに?」とビックリするほど被フォロー数が少なかった。

二つ目は大企業に多いが、ワザワザTwitter向けのコンテンツを用意している企業。各セクションの人や広報の人がみんなが喜びそうなネタを拾ってきて投稿している。朝日新聞は一般のニュースとは別アカウントで、各国の特派員が拾った取れたてほやほやのネタを流している。

これは確かに面白そうだし、読んでみたくもあるけど、「そこまでする意味があるのか?」と疑問に思う。個人の気軽なつぶやきというわけじゃないので、書いている方は楽しんでいるわけでもないだろう。完全に仕事だ。そして仕事としては割に合わないのではないかな。

「こんなこともやってます」というニュースバリューは少しはあるだろうが、それを業務内容としてマンパワーを裂くことが正しいのかどうか。どう考えても、そこからの一次集客はほとんど0だ。

三つ目は小規模事業所に多いが「社長ブログ」の延長線上にあるようなもの。これは確かに「つぶやいて」いる。読んでいて面白いかどうかは筆者次第だけど、堅さは少ない。気軽に質問する人や、メッセージのやりとりなどは少なくとも「見てて嫌」なものではない。

四つ目は個人事業主ぐらいの規模の人の完全な個人のつぶやきに、時たま宣伝が混じる、というレベルのもの。読んでいて面白い物が多い。「お客になりそうな人」も、そうでない人も全く関係なく会話が続いている。つぶやきの内容も「これって外に流してもいいものなの?」という話も少なくない。

五つ目は企業ではないが、個人(と思われる)で情報商材の宣伝を延々としている人達だ。これは驚くほど数が多い。アフィリエイトのサイトに誘導したり宣伝100%の人から、一応「みんなの役に立つ情報を」とAmazonや広告、通販のサイトのURLを貼りまくる人まで。

これはやっている人もそれなりのITスキルがあるのだろう。「フォローした人はフォローを返してくれる確率が高い」法則を上手く利用しているのか、手動ではまず無理なレベルのフォローを稼いでいる。頻繁にフォロー、リムーブを繰り返してメールが届く人なんかは、ほとんどスパムなんじゃないのかな。

Twitterでの企業収益モデル

Twitter自体が完全に一企業の情報サービスなので、直接そこから金が動く事態は少ない。Twitterのページでの広告が若干関連しているだろうけど、専用ソフトでつぶやいている人には関係がない。

インターネット全体のように「管理者がいない」わけじゃなく、無法地帯でもない。なので一方的にメッセージを送りつけたり、迷惑行為と認定されるようなことを行えばアカウント自体が停止になる。このために強引な方法はNGだ。

将来のことを考えると、フォロー数の多い人のタイムライン枠の買い取りなどが発生するかも知れない。現在の個人ブログの広告表示システムのようなものだ。30分に一回、企業のCMのようなものが割り込んでくるとかね。

もしくは口コミ要員を配置して自作自演の広告効果のあるつぶやきをしてもらう等だ。これもおおっぴらにやればばれるだろうが、Twitterは他のWebやブログ、掲示板、2ちゃんねるに比べると「俯瞰で見ることが難しい」メディアだ。個人が全体の発言傾向をつかむことは難しいため、自作自演が発生したとしてもばれにくい。ただ、もちろん効果も限定的になるが。

もう少し健全な発想だと、リコメンドのように「この商品についてつぶやいたら何ポイント提供」みたいなシステムが出来るかもしれない。良い噂悪い噂に限らず、商品名をつぶやけば何かに還元できるポイントが入るようなシステムを、企業単独かTwitter側と提携して実施するとかね。

もちろん「こんなことも可能かな?」と考えているだけで推奨する気は全くない。(というより既に動いているのかもね)今のところは、まだまだTwitterは「みんなの気軽な遊び場」だ。それが一方的にビジネス色に染まっていくのは忍びない。

某企業がキャンペーンにTwitterを使おうとして叩かれたり、ハッシュタグの奪い合いになったり、そういう事例は単にやり方がマズかったという側面もあるけど、「みんなの遊び場に営業マンがスーツで名刺もってきちゃった」的な空気の読めなさにも一因があると思う。

社内Twitter利用ガイドラインは必要か?

個人ブログが流行りだした頃、社内の極秘事項を書いてしまったり、内部告発的な書き込みがあったり、それが元でネット上で炎上祭りになって打撃を被ったり、そんな事例が後を絶たなかった。

同様のことは2ちゃんねる上でも繰り返され、ネット上に流す情報に関して企業はかなりナーバスになっている。「基本的に広報以外は一切の情報の流出を禁止」としている会社が多いのではないだろうか。

また、就業時間内にネットをやることへの非難ももちろんある。人的リソースがダダ漏れなのだから経営者の頭は痛い。もちろん就業中に2ちゃんねるに必死で書き込みしても会社にとって利益になることは99%無いのだから当然だ。

そんな中にSEO&SEMという流れも出てきて混沌とする。ネット上の知名度や広告効果を考えれば、検索順位が高い方を良しとし、悪名もまた名だ。とにかく露出するほうが得なことも多い。

SEMは検索リソースの奪い合いだ。関連情報やキーワードを満載して、少しでも「引っかかって」きてくれることを目的としている。だから企業はこぞって「社長ブログ」や「企業ブログ」を立ち上げた。技術的に詳しいことは省くが、要は「たくさん文章があればその中のキーワードに引っかかるかもしれない」ということだ。

今まではTwitterでいくらつぶやこうが、ほとんど検索エンジンには無視されていた。時と共に流れすぎていく「捨て情報」だったわけだ。それがTwitterの良さでもあったはずなんだが。

GoogleがTwitter向けの検索提携を発表してしばらくたった。そろそろ稼働してもおかしくはない。(現在BingはTwitterを検索内容に含めているというが、それほど大きく変わったように思えない)一般検索との比重をどう取るか、パラメータが気になる所だ。

Googleもソーシャル検索やリアルタイム検索に押され気味で、この問題の取り扱いが大きく注目されている。舵の切りようによっては「大Twitterビジネス時代」がやってこないとも限らない。

そんな中で企業内のTwitter利用は制限されるべきなのかどうか?広報や一握りの人間に任せていたら一気に検索順位を落とすところが出てくるだろう。許可するとしても何を喋っていいのかどうか?安易に導入して叩かれる企業が続出するような気もする。

企業ブログなどでは一旦責任者や担当者に投稿を集めて、許可を出してから掲載というような手段がよくとられているが、リアルタイム性の高いTwitterではまず無理だ。また一旦外へ出たつぶやきの変更や訂正も容易ではない。

そして重要なのが、個人と企業自体の線引きを何処にするか、という問題だ。個人アカウントとは別に企業内個人アカウントをとって就業時間内につぶやいても、それはちょっと面白くない。面白くないものは誰も見ない。

意外な職住一体化

例えば「あぁ、仕事おわんねぇ」というつぶやきに「今、なんの作業中ですか?」とメッセージが届いて、どこまで答えていいものか。そのやりとりを他のみんなも見ている。

もう一例、家で「あぁ、今日はエッチなお店にいっちゃった」とつぶやいたら「確か○○って会社の人でしたよね?」と返される。これもみんなが見ている。

今の所は、みんな一応節度をもって、そこそこ余所行きのつぶやきをしていなくもない。下品な人もいるが、逆にそういう人は仕事の話などしない。仕事の話をしている人が「多少ハメを外した発言」をするのがちょっと怖い。

あんまり言われないTwitterの特徴は「閲覧対象の比重が大きく偏る」ところじゃないだろうか。一応インターネット上なので、世界中の人が見ている。(誰が自分の個人ホームを見たかを知ることは出来ない)でも基本的に「自分をフォローしている人しか見ないだろう」その中でも「熱心に発言を追ってる人は知り合いの一握りだろう」というわけだ。

これはmixiやFacebookなんかのSNSでも、もっと言えば個人ブログでも同じ傾向だとは思うが、確かに熱心に読むのは一握りなのだが、一応は世界に向けての発信になるわけだ。

ブログはまだ「誰が読むかわかったもんじゃない」感が強いし、SNSは意図的に「隠して」いる。それがTwitterにはない。今後の検索サービスへの登録で意識が少し変わるかもしれないが、基本的に「思ったことをそのままつぶやく」スタイルなので、毎回つぶやく度に全世界を意識することは無理だろう。

これは危険なだけではなくて「外から見ると仕事している時とプライベートな時の区別がない」という重要な視点の変換だ。時間的なことだけではない、自分の中で公私のけじめをつけているつもりでも、外部の人間からは一体化しているということだ。

世間の意識の変革なんて、そうそう簡単に変わっていくものじゃない。でもつぶやいている人は簡単に流れに乗ってしまう。仕事とプライベートの境界線は、ネット上の第三者という意外な視点から崩れていくものなのかもしれない。

仕事の延長としての個人 -Twitterで宣伝、営業をする人々” に対して2件のコメントがあります。

  1. くるしま より:

    twitterは
    ごちゃまぜのスープ(懐かし~)

    美味くもなったりするし
    不味くもなったりするんだろう
    境界がない楽しさもある

    生き方を仕事とプライベートの天秤にかけて悩んでいる層を
    膝カックンする仕組みになるかもしれないね(笑)

  2. zali より:

    面白いことが起こりそうな予感もして楽しみなんだよねぇ

    「公私のけじめの無さ」を見知らぬ第三者の目から「強制」される
    珍妙な流れが出現するかも知れない

    Google Buzzをほんのちょっとだけ試してみたけど
    アレは、、、なんか違う
    というか自由度が高すぎて「ごちゃまぜのスープ」になりにくい
    流行らないかもなぁ

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