ブリキの太鼓
ギュンターグラスの名作「ブリキの太鼓」をはじめて読んだのは
小学校の頃だっただろうか?自分の判断で三歳の誕生日に成長を止
め、おもちゃのブリキの太鼓を叩き、叫び声で全てのガラスを粉々
に砕く主人公オスカルに激しく感情移入したのをおぼえている。
あまり日本人になじみのない、この小説化の描く大河の歴史の中
をすり抜けるオスカルは第二次世界大戦を通して自分自身でありつ
づける。青春時代を通しての私の数少ない愛読書の一つとなった。
この前、ノーベル文学賞を受賞したとかしないとかで、文庫版の
ブリキの太鼓が書店に平積みにされていた時期があった。表紙がか
わいくない。しかも、「グラスの他の著作も文庫化されるかも」と
いう願いもむなしく、ブームにすらならずに書店から消えた。
ビデオレンタルの店でブリキの太鼓のビデオを借りてきた。暗い
描写の随所に美しさが見られ、私としては満足だったのだが、一緒
に見た人間は、あまりのアンチクライマックスに愕然とした模様だ
った。そりゃそうかもしれない。興味がある人は、ビデオでビデオ
屋に走るか原作を読もう。