N君
久しぶりに高校時代の同級生に会ってきた。神奈川県民だという
のに場所は千葉で待ち合わせだった。やけに待ち合わせ場所などに
詳しい。不思議だ。
10数年ぶりにあった彼は、事前のメールどおり太っていたが以
前と変わらぬ誠実さと純朴さで出迎えてくれた。喫茶店へ。お互い
の仕事や思い出話など。楽しい会話が続くが、待ち合わせが千葉だ
という訳は、なかなか口を割らない。
最近の生活の話になる。「休みの日なんか何してんの?」「本屋
に行ったりだねぇ」「どんな本読むの?」「趣味の本だねぇ」「趣
味はなんだっけ?」「あぁ、知らなかったっけ」なかなか核心に迫
れない。
落ちとしては、「実は鉄道マニアだった」というのが正解で、単
に「千葉の電車はなかなか味がある」という理由で待ち合わせ場所
も決まったらしい。一度口を割ると彼も趣味の魅力を熱っぽく語っ
てくれた。私もそれ以上に「何かのネタに使えるかも」と熱っぽく
聞きだした。マニアの中での流派などはあるのか?電車はOKでジ
ェットコースターはダメという理由は何なのか?等々。
私はこういう話を聞くのが好きだ。鉄道だからではない。本屋に
行くと、とりあえず「宝塚ファン」とか「月刊剣道」とか「SMソ
ドム」とか自分が一生縁が無かろうと考えている分野の雑誌を読ん
だりするのが好きなのだ。
友人との懐かしい思い出や再会も、こうして知識欲の前に飲み込
まれ、鉄道について語り明かした半日の記憶だけが残った。