幾何学の絵本

あくどいオオカミが
直線上を走って
点Aにおいて
オオカミが来た
と叫ばれ
点Bにおいて
赤い布をかぶった女に
森で遊んでいけといい
角度を変えて
点Cにおいて
小屋を吹き飛ばし
点Dにおいて
ヤギをたいらげた

経路を求めるよりも早く
村人は呆れかえり
女は遊び呆けて
紙と木は強度が足りないことが判明し
ヤギは一匹隠れていた

ここで
決して交わる事のない
平行な直線上の
もう一匹のオオカミを
仮定してみよう

同一平面上で
奇跡のように起こる
各種の接点の
共通項

とおりがかった猟師に狙われて
ブタどもにしてやられて
腹部に石を詰め込まれるのは
はたして、どちらのオオカミなのか

子供の頃の記憶を
ゆっくりと掻き混ぜてみよう
全ては同一直線上で起こるとは限らない
しかし、全てはループして
一冊の本に閉じ込められたまま
君が再び開く日を待っている

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