続きはCMの後で


テレビを見ない生活をしているといっても100%見ないということは難しい。家族がたまに見ているのに遭遇することもある。電気屋に行けばテレビ売り場で流れている放送を目にしなければならない。

なんだか勘違いされやすいんだけど、ドラマや映画などのテレビで放送されるコンテンツの一個一個が全て嫌いな訳じゃない。むしろ好きなものも多い。テレビという入れ物が大嫌いなだけだ。

小さい頃、民放のテレビ放送の仕組みを知った時には「なんて上手く考えられたシステムなんだ」と軽い感動すら覚えたものだ。自分で作ったり放映権を買ってきたテレビ局が無料で番組を流す代わりに、CMというものを企業から金を取って間にはさむ。そのCMを見て商品の売り上げが伸びることで企業に金が入る。たくさんの人にCMを見てもらうためにテレビ局は頑張って視聴率を伸ばす。視聴者は基本的に「自分が気に入ったもの」を好きなだけ見ればいい。

自然淘汰の末にこういう形になったんだろうけど、よくできている。テレビ局、視聴者、広告企業の幸せな関係が続くはず、だったんだけどなぁ。その関係は壊れかけている気がしてならない。もちろんネットがどうのこうのというニューメディアの台頭もあるんだけど、そういう話じゃない。

「続きはCMの後で」というパターンがある。これはほんの一例だけど、わかりやすい例になるだろう。ちなみに、この後出てくる年代は僕の完全な主観だ。

はるか昔、広告は番組の中でという時代があった。今でいう情報番組の中で出演者が商品の説明をしたりするパターンが、ドラマの中でも行われていた、らしい。らしいというのは、実際にそれを生で見ていた世代じゃないからだ。てなもんや三度笠で「あたり前田のクラッカー」とか急に藤田まことが言い出すのが例としてはふさわしいのかな。

その後できちんとCMという枠が確立して、番組とは無関係に間に挿入されるようになった。70年代には結構有名なCMも生まれて「懐かしのテレビ」みたいな特集で目にする人も多い。でも、このころのCMの入り方って特に深く考えられていなかった気がする。結構適当に番組を三分割、四分割してザックリCMを挟んである。

番組を作る側も「ここでCMが入るだろう」とは考えて作ってないのでドラマだと山場だろうが長い台詞の途中だろうがCMが入ったりする。でもCMはたくさん入れたいんだろう、一回のCMがやたら長かったり、何度も何度もCMが入ったり試行錯誤の不思議な時代だった。

80年代初頭になると、もう全く迷いがない。コンテンツを作る側も「ここでCM」というのをはっきり意識して作っている。象徴的なのはアニメのAパート、Bパートの分化だけでなくアイキャッチというよく考えると意味がわからないものが入り始めた。実写ドラマで同じことやろうとしてたのをたまに見かけたけど、とうとう定着しなかったな。

このころはCMの入り方が綺麗だった。というか綺麗すぎた。キッチリと区切りの良いところで入る。物語の流れの邪魔にならない。人は安心してCMの間にトイレに行くことができた。切りがよすぎるので続きが気になることもあまりない。○○ロードショーや○○洋画劇場なんかでも結構気をつかって区切っていたのを覚えている。

で、この後やってきたのが「続きはCMの後で」ブーム。わざと気になる場面の直前で区切り、CMが挿入される。連発しなければよいアイデアだとは思う。CMを見せるという1点においては効果大だ。チャンネルをザッピングする文化がテレビリモコンの普及と共に始まり、それへの対抗措置だったのかもしれない。人は苦笑しながらもテレビの前でCMを黙って見ていた。

90年代に入ると「続きはCMの後で」→CM連発→「CM直前の流れのおさらい」というコンボが完成する。これができた経緯が想像できない。最初はCMが長すぎることへの単なる親切心だったんだろうか。確かに最初の方は「あぁ親切だな」と思った記憶がある。でも、それって程度問題だよね。

なんだか次第にコンテンツの中身が薄くなっていくような気がした。CM後の巻き戻しはドンドン延長された。CM前を見ていなくても流れについて行けるくらい。水増しだ。確かに「一つの山場を餌にいかにCMを見せるか」という目的からすると間違ってないんだけど。それでも一応この頃までは「盛り上がりの餌の魅力」と「CMの長さ」を天秤にかけて、ギリギリの計算はされていたような気がする。

2000年前後になると、もうこの「続きはCMの後で」というパターンは一種のネタ、お約束として受け入れられた感じがある。「あー、またやってるよ」という感じ。実際にそれを完全にネタとして使った場面も見られた。セルフパロディ的な要素があったんだと思う。でも「続きはCMの後で」をみんなが許していたわけじゃない。あくまでネタとして許していただけなんだと思う。

どうもテレビ関係者がこの部分を読み誤ってるように思えてならない。「あれ?これが許されるんなら、もうちょっといけるんじゃない?」本気でこう考えちゃったんじゃないかな。CMは一回の長さ自体はそれほど変わらないが、頻度は増え、巻き戻しも増えていった。もはやネタとして笑えないレベルに。

テレビ自体が嫌いなので自分的には「もうどうでもいい」んだけど、最近何回か家族も含めて「テレビを見ている人」を見ているシチュエーションになった。そのテレビ自体を僕は見てないんだけど、それでも少しイラッとした。それはいい。テレビ嫌いだしね。

問題はあまりに連発される「CMの後で」「続きは後半で」「CM前の流れの復習」に、とうとうテレビ大好き、テレビっ子の家族がキレた。今までだったら少なくともCM後の山場を一応確認して文句をいうパターンだったのに、好きな番組、好きなタレントだったにもかかわらず、その場でテレビを消し「テレビはもうダメだ」とつぶやいた。

他の場面でも何回かテレビ嫌いでもなさそうな人が「続きはCM~」なんて流れた瞬間にリモコンで電源を切るのを目にした。これがどこまで一般的なケースなのかわからないけど、完全に計算ミス。とても引っ張りきれないところを無理して引っ張ろうとして、途中でボロボロ脱落者を出してる気がする。

本来「続きはCMの後で」なんて、一回限りの裏技、チート技だ。テレビの視聴率が下がり続けている。一日で一番視聴率が良いのが水戸黄門の再放送なんて笑えない状況。(今はどうなっているのかな?)CM収益はバンバン下がっているらしいし。

オンデマンド配信なんていう発想は昔からあったけど、やっとこさ形になるのかならないのか。好きな時間に好きな番組を見る、という形。これと対極的なのがテレビ放送。テレビ局が決めた時間にテレビ局が決めたコンテンツをながす。それは別に良い。

でも、その決まった時間の流れをテレビ制作者が意図的にコントロールしようとして失敗。時空をねじ曲げたツケを払わされようとしている、そんな印象を持つ今日この頃。ドーピングのやり過ぎで、システム自体が狂っちゃったのかもしれない。

昔を懐かしんで「今のテレビ番組はつまらない」という感じはしない。というか、それほど番組自体は酷くなってないんだと思う。(見てないけど。昔からつまらない番組だってあった)ただテレビの「見せ方」については本当につまらない、というか酷い。テレビ局、視聴者、広告企業のバランスは修復不可能なくらい壊れてしまったように思える。

3 comments to 続きはCMの後で

  • あかししん

    民放が、公共の電波を使っている公共性を持っているとはいいます。
    しかし、結局は広告配信業として食わせてもらっている広告媒体なのですから、売れる広告枠(よりよくみてくれる広告枠)を上手に売る必要があります。
    そこを見失った番組づくりは、最終消費者である視聴者がどうこういう以前に、番組の需要者(スポンサー)に文句をつけられるはずだから、改められるはずだし、それができなければ、スポンサーがつかない形で修正させられているはずです。
    スポンサーからしても、視聴者が反感を買うような広告枠なんて論外、カネをもらっても広告を出したくないはずです。

    個人的には、いまは受信料を払うテレビしか見てないし、新聞も気に入ったときしか買わないけど、電車の中で見る広告(最近だと動画もあります)はなかなかいいんじゃないかと思ってます。

    テレビの現状は、商業放送の枠組みからして失敗しかかっているのかなと思っていますよ。

  • あかししん

    ごめん、最後の1行、間違いでした。許して。

    商業放送の理想的な枠組みは、おそらく正しいです。
    現状のテレビがもしそれに合わせられないのであれば、
    残念ながら現状のテレビは商業放送としての存在意義が
    ないってことですよね。

  • そうなんだよね。
    元々商業放送の収益システムって結構良くできてるのに、テレビ局(代理店、制作者も含めて)が勝手に自滅してるように思えちゃう。
    それが欲をかいた結果なのか、ネットを含めたニューメディアに対抗しようと焦ってるのかわからないけど。

    自分たちで首を絞めなければ、もっとテレビは延命できる気がしてたんだけどなぁ。
    映画を流してもCMで切り刻みすぎて「DVDで金払ってみた方がマシ」と思わせたり、代理店や芸能事務所との力関係だけで内容や出演者が選ばれて視聴者から見ると不自然きわまりなかったり。
    うまくバランスとれれば「まぁアリかな」って許容できる範囲を自分たちで逸脱しちゃってる感じ。

    テレビ広告やめたら収益伸びる企業が出たり、CM枠もACの公共広告機構や穴埋めの薬品CMばかりになっちゃってるらしいし。
    視聴者からも企業からもそっぽを向かれて、軒並みキー局が赤字に転落した今、三すくみの自然淘汰でバランスが取り戻せるのか、ちょっと難しいかもね。

    昔はテレビっ子で、テレビ大好きだったんだけどなぁ。

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